親父の宝くじ

親父が買った宝くじを掃除の最中に母が見つけた。

母は趣味の一環として微笑ましげだった。

 

もうすぐ還暦になる親父と飲んだ。

親父の会社は機械の部品を作っている製造業であるが、80代の会長が保守的で、赤字が見込まれ先がない製造業を廃業して隠居したいらしい。

ただ、従業員も少なからずいるため、経営陣のひとりである親父は、会長を説得して廃業を回避させたいが、一介のサラリーマンである親父には会長から会社を買い上げるだけの金はないため、会長に従わざるをえない。

 

飲みの中で、親父としてはその宝くじが当たれば、会長から独力して会社を立て直そうというつもりだったことを話した。

 

ただの宝くじに、親父の切ない希望がこめられていたことを知り、少し悲しくなった。